●小宮山蘭子さん
(こみやまらんこ)
作家。Webライター。大手電子書店から小説発売中。その他にもコラム連載及びタウン誌や種々のWebコンテンツ編集・執筆・制作等に携わる。
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近年、パソコンやインターネット上のソフトの開発が進んで、個人でも手軽に年賀状を作ることができるようになりました。私も仕事柄ネットでの情報を仕入れやすく、パソコンの扱いにも慣れているということから、ダウンロードフリーの画像や字体などを使ってオリジナル年賀状を作ります。年末になると、自分のものだけでなく、家族全員の年賀状制作を一手に引き受けています。
主人用(家族の名前が記載されたメインのもの)、私個人用、息子用、娘用、義母用……と、今年も5件のご注文を承り、はりきって制作させていただきました(笑)それぞれの要望に応じた画像を探したりデザインを考えたりするのは時間がかかりますが、意外と楽しいものです。
ただ、表の宛名書きだけは印刷ではなく、どんなに枚数が多くても一枚一枚筆ペンで手書きをするようにしています。私が宛名の方は印刷どころか入力すらしないので、必然的に他の家族も手書きを強いられることになってしまってます(笑)
また、裏にも、「今年はぜひ会いましょうね」とか「○○、がんばってますか?」とか、相手に応じた添え書きを加えるようにしています。
私はこうしてネット上に掲載する文章をいろいろ書いていますが、場合によっては人の温もりや感情が伝わる表現が必要とされることがあります。小説や、このようなコラムもそういう類のものかもしれません。けれども、どんなに短い言葉でも、たどたどしい表現でも、手書きの文字が伝え来るものには決して叶わない部分があるのです。手書き文字がキーボードで繰り出した文字と決定的に違うのは、それが世界に一つだけの絵画のようなものだからかもしれません。
例えば、「元気?」と書かれた文字がぶっきらぼうなヘタ字であったとしても、ハガキの小さなスペースから浮かび上がってくる姿は、書いた人の面影や声までも宿っている気がします。ですから、年に一度、離れた友や懐かしい人と想いを交わす年賀状ぐらいは、一言でも生きた文字を贈りたいと思うのです。
そうして、毎年筆ペンを握って年賀状に向う時--私は必ず父のことを考え、幼い頃からの思い出をかみしめます。